キミが欲しい、とキスが言う
「待たせてごめんね、浅黄」
ぎゅっと抱きしめると、鼻をすすってしがみついてくる。赤ん坊のころに比べれば大きくなったとはいえ、まだ小さい。まだまだ、守ってあげなきゃいかないのに。
「一度帰ってきたらお母さんいなくて。スーパーで時間つぶしてから帰ってきたらあの人がいて。……僕、あの人にもらわれちゃうのかと思った」
「ごめんね。ちゃんと話すから」
浅黄を立たせて、歩き出す。
そこでようやく、ダニエルは私たちに気づいたようだ。二階から大きく手を振っている。
のんきな人。
思わす苦笑してしまう。
もう過去だけど、そういうところも好きではあった。
私にはないゆったりとした空気を持つ彼が、無性に愛しい時も確かにあった。
「みんな家に入って。ちゃんと話し合いましょう」
鍵を開け、まずは浅黄を中にいれる。
続いてダニエルが入り、馬場くんがじっと私を見つめてくる。
「俺はどうすればいい?」
「……中に入って。あなたももう関係者よ」
締めきっていた部屋はひどく暑い。
先に入っていた浅黄が、カーテンを閉めエアコンのスイッチを入れてくれる。
私は冷蔵庫を確認して、冷たい麦茶を四人分よそった。
丸いテーブルを囲むように、三人が顔を見合わせている。
ダニエルにいたっては、居心地が悪いのか正座をしていた。
「親父さんに、見つかったことだけ伝えておくよ」と馬場くんが電話し始めたので、私も美咲ちゃんにメールを入れる。
そして終わったところで、おもむろに話し出した。