キミが欲しい、とキスが言う

「まずは浅黄ね。質問に答えるわ。何が聞きたい?」


私の問いかけに、浅黄は体をびくつかせて、上目遣いでダニエルを見た。


「……この人は、僕のお父さんなの?」


その問いに、ダニエルも身を乗り出してくる。馬場くんは神妙な顔で私を見つめていた。


「そうね。この人はダニエル=ブラウンさん。浅黄の……お父さんで間違いないわ」


一番うれしそうな顔をしたのはダニエルだ。浅黄は、やっぱり、と小さくつぶやく。
私は、静かに続けた。


「浅黄の髪が金髪なのは、そのせいよ。あなたのお父さんと私はずっと前に恋をしていたの。でもお父さんはアメリカの人でね、国に帰らなきゃならなくなって、私とはお別れしたの。だからあなたのお父さんは、今まで浅黄がいることも知らなかったの。決してあなたが捨てられたわけじゃないわ」

「……本当?」


びっくりしたように見上げる浅黄を、ダニエルはひどく優しい顔で見つめた。


「本当だよ。アサギ……って呼んでいいかい?」


手を広げるダニエルに、浅黄は飛び込むことは躊躇していたけれど、こくんと小さく頷いた。
そうしたら、有無を言わさず抱きしめてくる。


「僕に息子がいたなんて! なんて素晴らしいんだ。今まで何もしてやれなくてごめん。これからはどこにでも連れて行ってあげるよ」


浮かれたように、ダニエルは浅黄の金髪にほほを擦り付ける。浅黄は困り果てて、硬直してしまっている。


「やめて、ダニエル」


我慢しようかと思ったけれど、耐えられなくて思わず厳しい声を出してしまった。
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