キミが欲しい、とキスが言う
お金は一杯入ってきたから一人暮らしも出来る。
もう文句を言う親にも従う必要なんてない。
私のこの行動を面白がっていた当時の彼氏は、やがてたかってくるようになったから別れた。
誰に頼らなくても、生きていけるのなんてこれが初めて。
勉強なんてやめて、これで一生食べていけばいいじゃないって、その時の私は安易に考えていた。
いつの間にか店のナンバースリーにまでのし上がっていた二十二歳の時、私が呼ばれた席には、常連だった森田さんと、金髪の端正な顔立ちの青年がいた。
安っぽいネルシャツを着て、落ち着かなさそうに辺りを見回している。
「こちら、どなた?」
森田さんは大学で教鞭をとっていると教えてくれたことがあった。
てっきりその場だけの嘘の職業かと思っていたけれど、本当だったらしい。
「留学生のダニエル・ブラウンくんだ。あがり症でな。日本語にも自信がないそうなんだ。このままじゃ研究発表もできそうにないから、ちょっと変わったところで実地訓練させよう思ってさ」
「あはは。だからってこんなところに連れてこなくてもぉ」
「何を言う。キャバクラの女の子が一番熱心に話を聞いてくれるってもんだ」
堂々とそう言っちゃう森田教授もどうかと思うけど、まあ話し相手でお金が稼げるなら楽なものだ。
「じゃあお話しましょう? ダニエルさん? 私はアカネです」
「アカネ?」
彼が顔を上げた。
彼の青い瞳が私を捉える。瞬間、今まで誰にも感じなかった衝動が体を駆け巡った。
細面の、整った顔で金髪碧眼。
初めて会ったのに、何故か懐かしい気がした。
体の中に半分だけある異国の血がそう思わせるのか、私は彼に運命的なものを感じた。