キミが欲しい、とキスが言う
「どうした? アカネちゃん」
「え? いいえ。びっくりしちゃったぁ。すっごいイケメンさんで。頭もいいんでしょう? すごいなぁ」
取り繕ったように笑いながら、はにかむ彼を見つめる。
目が合うたびに引力に似た何かを感じるのはきっと私だけじゃないんだろう。彼も、恥ずかしそうにそらす割には、何度もこちらを見ようと試みている。
「……いい、名前、ですね。アカネ……さん」
「そう?」
「日本の色、の、研究してます」
なるほど、彼は私の名前に興味を持ったようだった。
その日、ずっと恥ずかしそうにしどろもどろの日本語を話す彼に、最後に英語で話しかけた。
「Please tell me you.(あなたのことを教えて?)」
「え……」
彼は驚いたまま、私を見つめる。
意表をつけたことがうれしくて、私は得意げに笑って見せた。
「私、母がイギリス人なの。少しは話せるのよ?」
「Really?(本当?)」
途端に、彼は緊張を解いた。
そこからまくしたてられる英語は、残念ながらほとんどが聞き取れない。
「ごめんなさい。そこまで早く話されると分からないわ」
「あっ。ゴメンナサイ。つい……」
「いいえ。やっぱり英語は難しいわ」
調子に乗りすぎたわ、と舌を出して見せたら、彼は両手で私の手を握った。