キミが欲しい、とキスが言う
留学生といっても、自国の大学を卒業して、さらに日本語学校で学んでから大学院に入学したという彼の年齢は、私より二つほど上。
それでも、いつも敬語でおどおどしていて、私は小さな男の子の面倒を見ているような気にばかりなった。
かわいくて抱きしめたい。
そんな欲求を押さえつけるのに、ずっと苦労していた。
「発表があるんデス。うまくできるか、心配デ」
「大丈夫よ」
「卒業発表の時も、途中で止まっちゃっテ、みんなからバカにされました」
「そんな心配ばっかりしてるから悪いのよ」
彼の頬に手を伸ばし、思いきりぐいと引っ張って頬にキスをした。
「おまじないよ。あがらないでできるわ」
「アカネさん……」
頬を抑えたまま、いつまでもぽーっとして私を見ていた。
“私の小さな男の子”
年上の彼に対して、そんな気持ちを持っていた。
姉のような気持ちで、彼を守りたいとそう思っていた。
「発表がうまくできたら、伝えたいことがあります」
「なに?」
「内緒です」
その一か月後。
無事発表を終えたという彼は、頬を染めて私に交際を申し込んできた。
本気かどうか疑ったりなんかしなかった。
私の仕事を最初から知っていて言うのだから、彼は職業ごと私を許容してくれるんだろうと思って、私はイエスの返事をした。