キミが欲しい、とキスが言う

「じゃあね」

「あ、ちょっと待った。俺、今日定休日なんですけど」

「ああ、そうね。火曜ね」

「茜さん、昼間は空いてるんでしょ?」

「ん? まあね」


モニターの仕事は別に急ぎではない。買い物に行ったり掃除をしたりはまああるけど、一時間程度で終わるだろう。


「デートしません?」


開けかけた扉を押すように、馬場くんが体重を乗せる。行く手を阻まれてしまって、途方に暮れた気分で彼を見上げた。


「デート?」

「そう。夕方から仕事でしょう? それに差し支えない範囲でいいですから」

「どうしたの急に」


隣に越してきて、一週間。
普通に毎日顔を合わせていたから、改まってそんなことを言われるのは今更な気がする。


「別に急じゃないでしょう。今までの流れから言ったら自然じゃないですか? ずっと口説いているんですから、デートくらい誘うでしょう」

「最近のあれは口説いてるに入るの?」

「そう見えませんか?」

「子供たちと話したくて早起きしてるんだと思ってた」

「……あー、茜さんって思ってたより鈍感ですね」


さらっとひどいこと言ったわよ、この人。
軽くにらんでやったら、彼は軽く肩をすくめた。


「茜さん少し寝るんでしょ? 昼前に起こしに来ますね」

「えっ、あ」


そういって、またさっさと部屋に入ってしまう。
デートの話は、もう了承したことになっちゃってるのかしら。

だめだ。
どうしても馬場くんのペースについていけない。


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