政略結婚から助けてくれたのは御曹司様



「待って、果穂ちゃん」



陽介さんの声がする
けど、私は待たない

私は果穂じゃない



慌ててテラスへの階段を上がる、と
躓いてしまい、バランスを崩した


慌てていたとはいえ
ドレスを着ていた事を忘れていた
なんとか、持ちこたえようとしたが
ドレスがテラスに引っかかり
グイッと身体を持って行かれた



『きゃっ』


落ちる、そう思ったが
一向に落ちない

落ちない代わりに、私ではない
知らない人の温もりを感じた


驚いて目を開けると
私の目の前には胸板があり
片腕で抱きしめられていた



だれ?



「大丈夫?」



顔を上げると、知らない人だった
けど、多分あの人だと思った



「果穂ちゃんっ!」


その声に私の身体はビクついた



果穂?とその男の人は怪訝な顔をした



「僕の果穂ちゃんから離れろっ!」


陽介さんの声に私は名前も知らない彼のスーツを掴んでしまった


もし、この人が私から離れたら
間違いなく陽介さんは私から離れない
そして、私を果穂と呼ぶだろう



「果穂ちゃん」


そう言って私の肩を掴む陽介さん




いやっ…

そんな声、陽介さんには聞こえない
が、彼には聞こえていたみたいで
バシッと私の肩に置かれた手を払ってくれた
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