政略結婚から助けてくれたのは御曹司様



母は昔、質素な生活をしていたらしい
今では考えられないが
学生時代はアルバイトをしていて
家計を助けていたそうだ

母の両親、私から見たら祖父母だけど
一度も会ったことは無い

母が一度だけ
「あの人たちは私を売ったのよ」
悲しい顔で言っていた


父の両親は元々資産家で
お金がある暮らしをしていた
だから父の金銭感覚はおかしい

母もそんな父と結婚したから
金銭感覚が麻痺したんだろう


父は私を溺愛し、なんでも与えてくれた
別に欲しいと言わなくても…


「いらない」と言えば
悲しい顔をされ
母に「貰えるものは貰いなさい」と
小さい頃から怒られていた


私はそんな両親とは違い金銭感覚は麻痺していない


っというか、物欲が全く無い
欲しいものすら無い


この部屋の家具も
私の服も下着も全て
母の趣味なんだ


母は自分が出来なかったことを
私にさせたいのだろう

だが最近、そんな母は私から離れた
男に夢中だからだろう


心底ホッとしている
母の趣味は私とは違う
母はフリフリなレースのものを好む
清楚に可愛らしく見せるためだろう


だが、私はシンプルなものでいい
レースなんていらない
色も白や柔らかいピンクがばかり


母がいないなら、ラフな格好でいいんじゃ無いか……そう考えたが
父に呼ばれている以上、無理だ


クローゼットを開き、父が好む服を選ぶ
1着の服を取り出し
私はため息をつく
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