政略結婚から助けてくれたのは御曹司様

希望と絶望




案の定、時間に間に合わなかった
パーティー会場に着いたのは
開始15分が経っていた


疲労困憊だ


優しく、と頼んだのに
いつもと変わらない

身体のだるさを抱えながら
ドレスを選び、セット


会場に着けば
陽介の隣で歩く



「大丈夫?」


なんて心配する陽介の口元が上がっている
確信犯だ
上機嫌な陽介



「一通り挨拶したら、休んでても大丈夫」



まだ終わらないのかと
作り笑顔も、疲れていた




「志津香、お疲れ様。ありがとう。上に部屋を取ってあるから休んでいて」



そう言って、私に鍵を渡してきた



『ありがとう…、けどお義父様にお会いしていませんよ?』



連れてこい、と言った張本人がいない



「そう言えば…、あの人は本当に勝手だ」



それで、済むんだ
なんだか疲れてしまった


「先に寝てていいよ、今日は泊まるから」



陽介のキスを受け
そのまま別れた


陽介がホールへ戻っていくのを確認し
私は触れられた頬を拭った



何度されても、無理だ
毎朝、行ってきます、と
頬や首筋にキスをする

扉が閉まると、私は必ず拭う



渡されたキー、部屋番を確認する
エレベーターを待ち、乗り込む


扉が閉まる瞬間に、
待って、と言う言葉と手のひらが見えた
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