政略結婚から助けてくれたのは御曹司様



慌てて、開のボタンを押す



「助かったー」




そう言いながら乗り込んできた人を見上げる



「久しぶり」



あまりにも突然で、驚いてしまう
エレベーターの扉が閉まり
密室になる




『……、お久しぶ、り…です』



まさか会えるなんて…
彼を見ると、結納の日の事を思い出す


けど、今は……違う
あの夢を見させてくれたのなら
こうして私の前に現れないでほしい


じゃないと、少しでも期待してしまう



彼と距離を置こうと、エレベーターの隅へ身体をずらす



彼は15のボタンを押した
15階に用事があるんだろう



彼がいる、ってという事は
パーティーに参加していたんだろうか

けど挨拶回りをしていた時
彼には会わなかったし
彼の姿を見かけることもなかった


たまたま?
…それでも、また彼に会えた
期待したくない、という気持ち
けど会えたという嬉しさがあった


ポーン



15階に着いた
扉が開く


彼が動いたのがわかった
彼とはサヨナラだ

やはりあの時、言ってくれた言葉は
気休め。私を慰める嘘



エレベーターの扉が閉じるまで
下を向き目を閉じる

もし、彼を見たら
私は彼を追ってしまいそうだ

あれは嘘だったの?と
言ってしまうだろう
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