政略結婚から助けてくれたのは御曹司様



オルガンの演奏が始まる
扉の前に立つ私…

私の隣には
知らない年配の男性


父に似ているから
父の代役なんだろう

この人が赤城です、って言っても
誰も気にしないだろう


扉が開かれ、私達は一歩ずつ前に進む
左側には陽介の親族
何度か会った陽介の両親

嬉しそうに見てくる



右側には…、知らない人たちだ
あー、この人達は雇われた人達なんだろう
母親役らしき人は着物を着ている


「志津香、おめでとう」


なんて、わざとらしい声も聞こえた
そして、歩く先には悪魔が微笑んで待っている



もう、ダメなんだ
やはり…私は陽介から逃げられない
逃げられないなら…死にたい



式は私の意志と関係なく進んでいく



「…はい、誓います」


陽介の言葉に私は口を結ぶ
次は私、
口が裂けても…言いたくない
けど、それも虚しく
私ではない声が、私の胸元から発せられた


驚いて見てみると
アクセサリーと紛れて、小型スピーカーが取り付けられていた


私が誓いを言わないだろうと
踏んでいたんだろう


陽介を見れば、何事もなかったかのように微笑んでいた



何もかも、お見通しなんだ…



「それでは、誓いのキスを…」



牧師に強引に向けられた身体
両肩に陽介の手がかかる

もう、逃げられない…
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