政略結婚から助けてくれたのは御曹司様

温かい温もり




その時、
ダン、と勢いよく扉が開かれた


陽介の唇が触れる事はなく
みんなが扉の方を向き
私達も何事かと、視線を向ける



「陽介さんっ!」



その声に、ざわつき始めた
誰なんだろうか、
いきなり現れた女性

私達の方へ歩いてくる
陽介を見れば、驚いている


そして小さな声で



「麻耶…」


その瞬間、落胆していた気持ちが上昇した


間違いない、
これは陽介にとって最大なピンチなはずだ



麻耶という彼女の腕の中には小さな赤ちゃん



彼女が私達の前に立つ


「どういうこと?」


彼女は確実に怒っている


「結婚するなんて、聞いてない」
「私とのことは遊びだったの?」


彼女の一言でざわつきが更に増した
私は他人事のように思え
どう答えるか陽介を見ていた



「君には秘書の方から伝えてもらったはずだよ?受け取ったでしょ?」


陽介は平然と答えているように見えるが
私にはわかった

かなり焦っている
そして、陽介の母が何かに気がつき
私達に近づいてきた



「……もしかして、麻耶ちゃん?宮武麻耶ちゃんじゃない?」


その声に彼女は振り返り


「お久しぶりです、おば様」


陽介の母と彼女は顔見知り
そして陽介の父親は目を見開いて驚いたまま固まっていた
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