正義の味方に愛された魔女2
龍二はその日の夜に来てくれた。
仕事、残ってたんじゃないのかな?
自分の担当外なのに、振り回してしまったかも…。


「動きがあったら即行動、なんだよ。
時間がたてば経つほど解決しにくくなるんだから。
それに、百合に会いたかった…」


癖がまた出たよ。

龍二に抱き締められると、本当に安心する。
文字通り、心が安まる。


あぁ、キスしたいのね?うん…。


「…んっん~っ!……っ、はぁ……。
……ちょっとぉ!」


待ってよぉ。
ベッド行きたい想いでキスしないで。


「わかった……先に話……だな」


先週、想いを伝えあった後の二人の恋愛事情は、
今はちょっと置いといて……。
  



事件の犯人が店に現れた話を
覚えている限り伝えた。


沙耶ちゃんじゃなくて盗みにくいから出直そうとした事、
引き止めて石の取り扱いを説明しているうちに、盗もうとしていた商品をクレジットカードで買ってくれた事、
出来上がりには一週間かかると伝えた事、
盗んだものは手入れをして使ってくれる事、
………を、話した。


「なに考えてるか、何となく想像つくから言うけど、
証拠がないからって、帳消しにはできない。

でも心情的にスッキリしないんだろ?
じゃ納得できるように証拠を捜さないとな。

この間の鑑識結果で、
鍵のかかったショーケースの内側に残ってた指紋のうち、
沙耶ちゃんと百合の他の、誰かの指紋が三つ。
前科者リストと照合しても該当者はいなかった。
普通、客はあの中に手を突っ込んだりしないんじゃないか?

その女は来店二度目だって言ったよな?

カードの控えと、預り証と、そのピアス、
一応、預かっていくから」


確かにあのショーケースは常時、施錠されていて、興味を持ってもらった場合だけ出して見せる。
中にお客様が手を入れるのは、
高さやケースの形状的に不自然な行為だ。

もしあの人が盗ったとしたらその指紋は……。
詰んだよね?……チェックメイトだ。


なんだかスゴいなプロは。
誤魔化しが効かない。
そうか、
動いているのは正義の味方だっけ。


「ありがとう、龍二」


「なぁ……そんな顔しないで。
今晩泊まっちゃダメな気がして来るんだけど……」

優しい手が頬を撫でる。

《叱られた子供みたいだな。
『あれ買って欲しいなぁ…』ってダメモトで言ったら、やっぱり
『ダメに決まってるでしょ!』って言われてさ、
シュンとなる子供……》


「ううん、
私がスッキリ納得できるように、
視たものと一致する証拠を捜してくれるの、
嬉しいよ。
帳消しなんて、結局スッキリ出来ないよね。
考えが甘いんだよね」


「優しすぎると、そういう失敗もあるさ。
でも、そういう百合が俺は好きだ」

はい、また癖が出ました。抱きすぎです。甘すぎます。
実は、優しすぎるのは龍二です。




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