正義の味方に愛された魔女2

④ 婚姻届を提出します

………今夜のイベントには、まだ家で続きがあって……。




お風呂から上がると、
先に上がった彼は、リビングでソファに座って待っていた…。


あれ?
いつものエロ龍二はベッドで手ぐすね引いて待ってるのに。
なになに?


『ここに座れ』と、自分の隣を叩くので、はいはい、何でしょう?とくっついて座る……。

リミッター効いてるから視えないんだけど。



テーブルの上に広げられた一枚の薄い用紙……婚姻届。
あぁ……ここでこれの登場だったのね?
リミッター効いてる内に私に感動をあげよう、とね。


婚姻届には既に龍二の署名捺印がある。


「百合も書いて。
それで証人なんだけど、一人は親父になってもらおうと思って、明日の朝、行くって連絡した。視て知ってるとは思うけど。一緒にいこうな?あの人、百合大好きだからな…」


「うん……うん、書く書く。一緒にお願いしに行く」


「もう一人は?私の親族にする?兄さんに頼むの、今は難しいよ?
去年一回帰ってきた時、あと5年は向こうかな?って。
再婚するのも報告だけでいいと思うよ」

兄はもう何年も、会社のロンドン支社にいて、私はしばらく帰って来ないと思っている。
家族で移住したし、イギリス人と結婚した姪っ子に今年子供が生まれる。
兄妹仲は悪くないけど、一年に一回会うか会わないかだ。


「いや、もう隼人に頼んだよ。次に来る時、印鑑持って来てくれって頼んだら、さっそく明日の夜来るって、喜んでたぞ」


「え?いつ頼んだの?視えてなかったよ。息子でも証人になれるの?」


「今さっき電話した。百合が風呂入ってる時。
隼人にも聞かれたけど、証人は成人していれば続柄に関係なく、なってもらえる」


そうなんだ…知らなかった。


婚姻届の二人の記入欄が埋まると、急に実感が湧いてきた……。


「私、本当に龍二のお嫁さんになるんだね…死ぬまでずっと独身かと思ってたのに」


「……再婚するの、やめたくなったのか?」


「え?何で?違うよ。
だって、これを提出したら、荒川百合になるんだよ?再婚できるんだよ?
諦めていたことが現実になって夢みたいって思ったの。
今日は昔の言葉を覚えていてくれた龍二に夢を叶えてもらったし。
これからずっと二人で生きて行けるんだなぁって……」


「百合……夢が叶ったのは俺だよ。何年、想い続けてたと思ってる?
あの時の『フレンチでプロポーズ』の乙女発言の頃からもう気になってたよ。
好きだって自覚するまで、時間はかからなかった。
最近、気付かれてるのが判って腹をくくったんだ。
百合を、俺の嫁さんにするって…」


あ……デジャブ……。お姫様だっこだ。
腕力に余裕がある人は違うね、キスしながらだよ。


寝室のベッドで私を優しく抱き込んで静かな低音で囁く。

「愛してるよ、百合」


「私も。私も愛してる」


「リミッターは……まだ効いてる?」


「うん。たぶん朝起きるまで切れないと思う。龍二が度数高いのを頼んだからだよ?」


「よし、上手く行ってるな。これで今晩、思いっきりエロいこと考えられるし、言えるし、百合にも言わせられる」


「ん?最後、何て?私は言いたくなければ言わないよーだ」


「いやいや百合さん、そんなこと余裕で言っていられるの、今だけですよーだ」


不敵な微笑みを浮かべた龍二の、いつもより何倍も優しい愛撫が、
信じられないくらい淫靡な言葉責めとともに繰り広げられた。


視えない私は彼の言葉の言いなりで、
一緒に絶頂を迎えるまで、恥ずかしい言葉を何度も言わされ続けたのだった……。




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