放課後、キミとふたりきり。
「はー……。なんかモヤモヤするけど、まあいいか」
逃げて行ったふたりから、矢野くんの意識が離れたのを見てひとまずほっとした。
よかった、なんとか誤魔化せた。
わたしにもできることはある。
自信を持て、わたし。
そう意気込んでいる間に、矢野くんは早くも気持ちを切り替え席に戻っていた。
矢野くんのそういうところも、とても尊敬する。
いつまでも失敗を引きずってくよくよするのも、わたしの良くない所だから。
「なにぼーっとしてんだよ。座れば?」
「あ、うん。……藤枝さんは?」
わたしの問いに、矢野くんはちらりとこちらを見た。
ほんの少し嫌そうに唇を歪めて。
「あのあとすぐ追い払った」
なんでもないようにさらっと言った矢野くんは、作業を再開する。