先生、恋ってなんですか?
「お疲れ」
お店を出て、キョロキョロと周りを見渡すと、やっぱり先生は待っていた。
小走りで駆け寄り、それが当たり前のようにふたり並んで歩き出す。
「店長と何話してたの?」
「……いや、まぁ。宣戦布告された感じ、か」
「意味わかんない」
「お前は分からなくて良いよ」
そして私にデコピンする。
だから、地味に痛いんだよそれ。
「なんでお前なんだろうなぁ」
先生はそう言ってため息を吐く。
言っていることが意味不明。
なんなのさ、もう。
「ところでさぁ。私、今日、生まれて初めての告白されたよ。明日の休みにデートいってくる」
まぁいいや、と気を取り直し、決意を新たに宣言する。
言ってみてもほとほと現実味は無いのだけれど。
告白をされたことも、デートをすることも。
そう言えば、といってはなんだが、思えば生まれてこのかた、デートなんてことしたことがない。
学生時代。
友達と呼べる人はきっといた。
私がこちらに来てからは疎遠になってしまったけれど、それでも、学生時代には。
私のことを八方美人だなんだのと言っていたのとはまた違う子達。
そういう子達も、やっぱり狭いあの街で目指すものは、お嫁さんであり、良き母親ってやつだった。
皆はだから、恋に、勉強にと忙しそうにしていたから、私のことを「変わってるね」って不思議そうに見てた。
今年で25歳。
きっと同級生の半分は結婚して、なんなら子育てだって立派にしている子達も居るんだろう。