先生、恋ってなんですか?
でも私には夢が全てで、それしか見えてなかった。
そもそもあの街でそうやって夢を追いかけているような女子は私くらいなものだったし。
いや、もしかしたら他にもいたのかもしれないけれど、公言していたのは私くらいなものだった。
だからか知らないけれど、私に好きだといってくる男子も、まして付き合おう何て言ってくる男子なんていなかった。
男子たちはこぞって、可愛らしく愛らしい、お嫁さんにしたい女子たちを求めていた。
私はそもそも、そんなのってバカらしい、てスタンスで突っ張っているのがカッコいいというか、自分を持ってるみたいに思えていた。
だから必要としてなかったし、それでよかった。
だけど、大人になるにつれて人の心も変わるもの。
恋がどんなに素敵なものかは知らない。
夢と比較しようとも思わない。
けれど……
そうやっていきる人たちを、否定しようとは思わなくなった。
私にも、そういう相手ができるかもしれない。
もしかしたらこれは、世界が広がるチャンスなのかもしれない。
店長からの告白は、何だかんだで私に大きな風を吹かせていた。
「相手はあの店長か?」
「……良くわかったね」
言い当てられるなんてビックリだ。
「まぁ、頑張ってこい」
先生は、何でよりによって俺に言うかな、なんて言うけど仕方がない。
だって他に言う人もいないんだから。
みんなして同じこと言うんだから。
すみませんね、友達いなくて。
「じゃあ、明日も飯は要らねぇから」
「え?来ないの?」
「来ないの。そういうもんだ、バカたれ」
「そういう、もの?」
いつの間にかアパートについていて。
本日2回目のデコピンをして、先生は帰っていく。
「だから、痛いって……」
誰もいない夜の街につぶやく。
人と付き合う(かもしれない)というのは、私にはいささか難しい問題のようだ。