平凡な毎日に恋という名の調味料(スパイス)を
「すみません! 遅くなりました」
閉店の看板が下がったドアを開けると、すでに懐かしささえ覚える出汁の香り。
「そんなに急がなくても大丈夫なのに。湯上がりなんでしょ? 風邪引かないようにね」
丼鉢を手にした晃さんにいわれ顔が朱くなる。お風呂上がりなんて、男の人に宣言することじゃなかったよ。
軽く落ち込みながら、彼が引いてくれた椅子に腰を下ろす。
丼の他にも、アサリのお味噌汁に佃煮とお浸しの小鉢が添えられて、完璧な定食の体を成していた。
同じように並べた向かい側に晃さんが着くと、どちらともなく手を合わせる。
「いただきます」
丼の蓋を取るとまだ熱々の湯気が上る。
「親子丼!」
丸い器に広がるふるふるの半熟の玉子は、さっき見た満月にそっくりの黄金色をしていた。
「なんか、食べたくなっちゃってさ」
がっつりと箸で掻き込む姿は意外とワイルドだ。
とろとろの玉子が味の染みた鶏肉と甘い玉葱が絡んで、本気でほっぺたが落ちそうになる。結構なご飯の量があったはずなのに、あっという間にすべてが腹ペコだったお腹に納まっていた。
「ごちそうさまでした。いままで食べた親子丼の中で一番に美味しかったです」
「あいかわらず、褒め上手だよね」
食器を片付けながら、晃さんがケラケラと楽しそうに笑う。
「そうだ。どっちだったんですか? 赤ちゃん。写真、見せてください!!」
「うん、ちょっと待って」
棚からこの間と同じグラスを二つ取り出した。
「祝杯、あげようよ」
先日とは違う銘柄の一升瓶をでんとテーブルに置いた。
刹那、この前の失態が脳裏をよぎったけど、今日は宴会の帰りじゃないし、少しだけなら平気だろう。恭しく両手でグラスを捧げ持つ。
「じゃあ、ちょっとだけ」
にこりと笑んだ彼が、なみなみと澄み切った液体を注いだ。
閉店の看板が下がったドアを開けると、すでに懐かしささえ覚える出汁の香り。
「そんなに急がなくても大丈夫なのに。湯上がりなんでしょ? 風邪引かないようにね」
丼鉢を手にした晃さんにいわれ顔が朱くなる。お風呂上がりなんて、男の人に宣言することじゃなかったよ。
軽く落ち込みながら、彼が引いてくれた椅子に腰を下ろす。
丼の他にも、アサリのお味噌汁に佃煮とお浸しの小鉢が添えられて、完璧な定食の体を成していた。
同じように並べた向かい側に晃さんが着くと、どちらともなく手を合わせる。
「いただきます」
丼の蓋を取るとまだ熱々の湯気が上る。
「親子丼!」
丸い器に広がるふるふるの半熟の玉子は、さっき見た満月にそっくりの黄金色をしていた。
「なんか、食べたくなっちゃってさ」
がっつりと箸で掻き込む姿は意外とワイルドだ。
とろとろの玉子が味の染みた鶏肉と甘い玉葱が絡んで、本気でほっぺたが落ちそうになる。結構なご飯の量があったはずなのに、あっという間にすべてが腹ペコだったお腹に納まっていた。
「ごちそうさまでした。いままで食べた親子丼の中で一番に美味しかったです」
「あいかわらず、褒め上手だよね」
食器を片付けながら、晃さんがケラケラと楽しそうに笑う。
「そうだ。どっちだったんですか? 赤ちゃん。写真、見せてください!!」
「うん、ちょっと待って」
棚からこの間と同じグラスを二つ取り出した。
「祝杯、あげようよ」
先日とは違う銘柄の一升瓶をでんとテーブルに置いた。
刹那、この前の失態が脳裏をよぎったけど、今日は宴会の帰りじゃないし、少しだけなら平気だろう。恭しく両手でグラスを捧げ持つ。
「じゃあ、ちょっとだけ」
にこりと笑んだ彼が、なみなみと澄み切った液体を注いだ。