29歳、処女。
それからちらりと私を見て、



「………お前まさか、本当は超計算高い演技派ビッチとかじゃないだろうな?」



とわけのわからないことを言い出した。



「びっち? ってなんでしたっけ。聞いたことがあるようなないような………」



きょとんとして訊ね返すと、喜多嶋さんがおかしそうに噴き出す。



「んなわけねえか。ただのガキだよな」



それからこちらに手を伸ばしてきて、くしゃくしゃと頭を撫でられる。



「ちょっと、髪ぐちゃぐちゃになっちゃうじゃないですか」


「気にするな、もうすでにぐちゃぐちゃだから」


「えっ、うそ」


「寝てたんだから当たり前だろ。見てみろ」



喜多嶋さんが部屋の隅にあるスタンドミラーを指差したので、私はベッドを降りて鏡の前に移動する。



「ほんとだ。ぼさぼさ………」



朝ちゃんとセットしたはずの髪は、すっかり乱れてしまっていた。


ついでにいうと、服もなかなか着崩れてしまっている。



とりあえず直せる部分は直そうと、いつもより短いスカートの裾を伸ばして、襟の開いたカットソーもきちんと整えた。


最後に髪に手櫛を入れる。


でも、整髪料が残ったままで寝癖のついてしまった髪は、なかなか言うことを聞いてくれない。




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