29歳、処女。
「………馬鹿か」



呆れたように喜多嶋さんが肩をすくめた。



どういう意味ですか、と言おうとしたけど、できなかった。


あまりにも強く抱きすくめられて。



「く、くるし………」


「お前が馬鹿すぎるのが悪い」


「ええ……っ」



くすっと笑った喜多嶋さんの息が首に触れて、動悸が早くなる。



「あのさあ、雛子」


「はい」


「お前、めっちゃ可愛くなったよ」


「えっ」



声を上げると、喜多嶋さんが私の両肩をつかんで、まじまじと見つめてきた。



「生まれ変わったよ。もう男が放っとかないくらい」


「………それは、喜多嶋さんのおかげで」


「そうだよ、俺のおかげだ」



当たり前のように言うのがおかしくて、私は噴き出した。



「俺がお前を生まれ変わらせたんだ」


「はい」


「この俺が」



また抱きしめられる。


どうしてこんなに抱きしめてくれるんだろう。

どうしてこんなに優しくしてくれるんだろう。



「―――この俺が、他の男なんかのために、お前を磨くわけないだろ」



え、と声を上げると、喜多嶋さんがぽんぽん、と私の頭を撫でた。



「俺のためにやったんだよ。今さら、他の男なんかに渡すわけにいくか」



ぽかんとしていると、喜多嶋さんが「アホ面」と笑った。



「まだ分かんねえか。鈍いな」


「………あの」


「雛子のこと好きだから、だよ」


「………へ?」


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