29歳、処女。
「やっぱり馬鹿にしてるだろ」



喜多嶋さんが私の頬を軽くつねる。



「惚れられたと思って調子乗ってるな? 生意気だ」


「いたい、いたい」


「ざまあみろ」



喜多嶋さんがはじけるように笑って、それを聞いたとたん、幸福感に包まれた。


一緒になって笑いながら、はっとする。



「あっ、大事なこと忘れてた」


「? なんだよ」


「あの、喜多嶋さん」



姿勢を正して向き直る。



「私も喜多嶋さんのこと」



言いながら、緊張が急に高まってきて、心臓がわめきだした。


でも、言わなきゃ。



「………好きです」



声が震えた。


私の生まれて初めての告白。



喜多嶋さんが一瞬、目を見開いて、それからゆったりと笑った。



「知ってるよ。今日の顔見てたら分かるよ」



さすがです、と私も笑った。



笑いがおさまって沈黙が流れたとき、喜多嶋さんが両手で私の頬をはさんだ。


ゆっくりとキスを落とされる。



最初のキスよりも熱くて、二回目のキスより優しい。



唇が離れてから、目が合って、なんとなく同時に噴き出した。



「じゃあ、これから、レッスン第二弾の開始だな」



喜多嶋さんがくくっと笑いながら言う。



「第二弾、ですか?」


「そうだよ」


「まだあるんですか、レッスン」


「だって、一番大事なレッスンが残ってるだろ」



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