29歳、処女。
にやりと笑って、喜多嶋さんが私の首筋にキスをした。


初めての感覚に震える。



驚きと戸惑いで固まっている間に、鎖骨にも唇を触れされた。


その瞬間に、喜多嶋さんの言葉の意味をさとる。



「………ちょ、ちょっと待って、喜多嶋さん!」



喜多嶋さんの胸に手を当てて、慌てて離れる。



「まだ、心の準備が……!」



顔を真っ赤にしながら言うと、喜多嶋さんがこらえきれなくなったように笑った。



「あー、はいはい。分かってるよ。ガキにはまだ早いよな」


「………っ」


「ま、ゆっくり一から教えてやるから、安心しろ」



そう言って、喜多嶋さんはまた私の頭をくしゃくしゃにする。


もう、と言おうとした瞬間、また抱きすくめられた。



「………あのさ。お前がヴァージンだって知ったとき、俺がどれくらい嬉しかったか分かるか?」



耳許で囁かれる甘い声。


心臓が破裂しそうだ。



「お前が他の男にまだ許してないってことが、俺にとってどれくらい嬉しいか分かるか?」



真剣な声。

本当にそう思ってくれているのだと伝わってきた。


ああ、泣きそうだ。


私の恥ずかしい秘密を、こんなふうに言ってもらえるなんて、思ってもみなかった。


私の駄目なところも情けないところも、全てを受け入れてくれる人がいる。



「―――ありがとな、雛子。自分を大事にしてくれて」



ふ、と涙に滲んだ吐息が洩れた。


喜多嶋さんと触れ合っている部分が、火傷をしたように熱い気がした。



「お前の知らないことは全部、俺が教えてやるから、安心しろ」



火照る頬を喜多嶋さんの肩に押しつけながら、私はこくりと頷いた。



この人になら、私は全てを捧げられる。


生まれて初めて、私はそう思えた。






*Fin.



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