浅葱の桜
屋敷から出た瞬間、ガラガラと背後が崩れ落ちた。
一際大きく、とぐろを巻くように空へと伸びた炎は外にまで漏れる熱を伴って屋敷を包む。
きっと中で倒れたままの父も……。
ずっと知りたかった筈なのに知った今となっては知らなかったら良かったと後悔してる。
子供のことを当然のように『道具』と言い放ってしまう父親だなんて信じたくなかった、な。
「……一回下ろすよ」
「え?」
火の粉のかからない場所に降ろされた私は一気に雰囲気の変わった沖田さんに圧倒された。
普段は見せてくれない新選組一番組組長としての顔。
「そこに隠れているのは誰?」
「おやおや、こんなにすぐバレるとは」
「殺気ダダ漏れだった癖によく言うよ」
裏小路から顔を出したのは才蔵だった。
物々しい顔だ。傷跡も分からないくらいの血を被った彼は刀を持つ手の逆にはなにか大きなものを持っていた。
体の影に隠れて見えなかったものは明るいところに出てきた事で露わとなる。
それは首から下のない頭だ。
顔を隠している頭巾を考えると屋敷にいた謎の連中だろう。
何も無い腹から再び吐き出しそうになる。
「ゔっ……ぷ」
「残忍なことを」
頭を炎の中にくべるよう放り投げた彼。そこに立っていたのは人ではない。
人の皮をかぶった悪鬼だ。
恐ろしさと怒りで体が震えた。
「退いてくれねぇか。後はソイツで終いなんだよ、贄とかいうやつは」
「断る」
「返答が早いねぇ。お前にとってもそいつは助けて良かったもんじゃあねぇだろう?
そいつは正真正銘長州の娘だ。それもお前達に楯突く先陣に立っていたような男の。
新選組に牙を向く可能性だってあるんだから危険な芽は早々に摘んでおく必要があるだろうよ」
新選組に牙なんて剥くわけない!
そう叫びそうになるけれど、そっと沖田さんに制された。
「佐久がそんなことする訳ない」
「甘いな」
「もし、そうなったとしてもその時はこの俺が斬るから」