浅葱の桜
「ちと、来るのが遅かったようだ」
「お前は誰だ」
「そこのお嬢ちゃんの知り合い」
背中の陰から見えた顔に体が勝手に震える。
顔の刀傷に、この声。間違えない、この人が……私の家族を斬った張本人!
「に、しては彼女震えてるんだけど」
「嬉しんじゃないのか」
「知り合いなら、殺そうとはしないはずだけど」
沖田さんはいつの間にか抜いた彼に刀を向けていた。彼の剣は私は立っていた場所に深々と突き刺さっている。
その事実にゾッとせずにはいられない。あの場所に居れば私は間違えなく殺されていた。
「とりあえず、彼女の身柄をよこせ。若造」
「ごめんだね。彼女は新選組での詮議が残っているんだ。
見ず知らずのあんたなんかに彼女の身柄は渡せない」
「新選組……だと?」
その名前を聞いて明らかに狼狽えた彼。
「お、沖田……さんっ」
「沖田。ああ、一番組組長さんか。一番組組長沖田総司。知ってるぜ
新撰組最強の剣士だっけか?
……たくそんな割りにあわねぇことはしたくねぇな」
彼は刀を納めた。でも沖田さんはそのまま刀を彼に向けている。
「おい、沖田さんよ」
「何」
「そいつの身柄、早々に手放した方がいいぞ。……身を滅ぼすだけだ」
それだけを言うと彼は森の奥に消えた。