浅葱の桜
「っく、ふぇっ」
小さな女の子は桜の木下で蹲って泣いていた。
「咲良お嬢様!」
向こうから走ってくる人影に私は目を見開いた。
菊……姉ぇ?
私が知っている菊姉ぇよりずっと幼くて若い。十歳くらいじゃないかな?
「きくぅ……っ」
ぎゅっと、彼女は菊姉ぇに抱きついた。
「はいはい、お嬢様。今日はどうなされたのですか?」
「と、父さまがっ……私に、剣の指南を……っ」
「雅和様が?」
「いつもよりずっと怒られて。『それじゃあ【神の舞い手】にはなれないって」
そう言うと菊姉ぇはコロコロ笑う。
「わ、私にとっては、剣を楽しむ事なの!」
拗ねたように顔を背けた彼女。
涙を湛えた目尻を菊姉ぇは拭ってそっと抱き上げた。
「こほっ、こほこほ」
「はいっ、咲良お嬢様。戻ったら薬を飲みましょうね〜」
「うっ、あれ苦いから嫌だよ〜っ」
顔を顰めた彼女の頭を撫でた菊姉ぇは苦々しい顔をしながらも静かに笑う。
「飲めたら褒めてあげるからね〜」
「本当っ⁉︎」
「ええ、勿論!」
「ならちゃんと飲むっ!」
仲のいい姉妹のよう、菊姉ぇは彼女を抱き上げ来た道を戻っていく。
その様子を見ながら私は自分の意識が浮上していくのが分かる。
あの子は––––まさ、