浅葱の桜
「っ」
何だろう。頭がズキズキする。
夢を見てた気がする。とても懐かしい夢。
私の持ってない、忘れている記憶を。
でも、その夢の内容も思い出せない。欠片も。
……私には五歳までの記憶が一切ない。
覚えているのは菊姉ぇたちと一緒に花鳥座として、巡業をしていることだけ。
後は、私の刀と技だけ。
「起きたの」
「ひょえ⁉︎」
物思いに更けている間に声を掛けられて立ち上がる。
……筈だったけど、足首が縛られていたことを忘れてた私はそのまま、
盛大に倒れた。
「馬鹿なの」
「……ご、ごめんなひゃい」
畳に突っ伏した私を呆れた顔で沖田さんは見る。
ううう、刺さる視線が痛すぎる。
「はい、起きる」
腕を引っ張られ、立ち上がらされるとそのまま縄を解かれる。
「へ?」
「もう縄はいらない。夜の間は逃げられる可能性があったから縛っただけ」
「あ、そうですか」
近藤さんの元へ行かないと、そう言った沖田さんは私の着物の裾を引っ張って歩き出す。
やっぱり、遠慮ないな〜。
歩幅が大きいから引っ張られている状態だもん。
……着物が握られているのが気になって仕方ないんだけど。
腕でも構わなくない?
なんて事、言える筈もなく。
私は付いていくだけで精一杯だった。