浅葱の桜
その声音が怒ってるように聞こえるんですっ。
なんて言わないですよ? 沖田さん、そういうのグサッと来そうだし。
しばらくずっと一緒の部屋で過ごしただけの甲斐はあります!
「……美櫻」
ツゥっと沖田さんの指が顎を撫でる。
今までに見たことないような沖田さんの視線にこてんと首を傾げた。
何かを欲しそうだけど……それを怖がっているような。
見たことのない色が、炎が沖田さんの瞳の奥で揺らいでいた。
武士らしい、少しゴツゴツしてて、肉刺のある手が私の頰を撫でた時。
ピクン、と肩が揺れた。
今、すっごく心臓が跳ねたんだけど!? 何で!?
怖いことなんて何もないよ!?
「あ……悪い」
すっと離された手の温もりが名残おしい。
思わず添えそうになった手。
「……あれ? もしかして、お邪魔、ですかね?」
!!
後ろにはお盆一杯の団子の山を抱えた店員さんが。
「違うから」
早く頂戴と店員さんがお盆を置く前に一番上の団子を沖田さんは取る。
一本をさっさと食べ終えた沖田さんは置かれた直後にまた新しい一本を手にかけていた。
「お隣、いいですか?」
店員さんに声をかけられ、考えるよりも先には「はい」と答えてしまっていた。
「じゃ、失礼しま〜す」
髪を纏めている簪が揺れていた。明るめで大きな瞳が私を見る。
「初めまして、私、密月って言います。ここの一人娘なんです。あなたは?」
「わ、私ですか? 私は、美櫻と言います。よ、宜しくお願いします」
ぎこちないお辞儀に自分で恥ずかしくなる。
「あの、密月さん」
「密月でいいよ。私も美櫻って呼ぶから」