浅葱の桜
「何だ〜少年。その程度か」
障子を割って転がってきた人影に絶句する。
それは全身を血で汚し、だらりと腕を下げた沖田さんだった。
「沖田さんッ!」
そう、状況も把握せずに叫ぶ程度には混乱していたのだと思う。
「み……お?」
目を大きく見開く沖田さんに近付こうとして足を止める。
「な、ぜ貴方がここに」
バキッと障子を踏みつけ現れた人影に全身が震えだす。
忘れない、忘れられない。あの特徴的な刀傷。
「おお。『人形姫』もお出ましとは。愉快愉快」
クックックと笑う表情に歯が鳴り始める。汗が止まらないほど暑いはずなのに体の芯から凍る。
「丁度いい。屯所まで向かう手前が省けた。俺についてきてもらえますかな、お姫様」
「い……嫌ですッ! な、なんで私が貴方に付いて行かないといけないんですか!」
ゆっくりと歩み寄ってくるその人から離れるためにずるずると下がる。
差し出された手が赤く染まっているのを見て、その恐怖心は余計に煽られた。
後ろも振り返らずに下がっていると壁にぶつかってしまう。
「貴方がいる場所はここではない。さぁ、お父上のところに戻りなさい」
…………え?