君が好きになるまで、好きでいていいですか?


「あの……後藤さんに、書類と差し入れを…………」

思いもよらないこの状況に動揺する自分がいて


思い出しても彼との数少ない会話の中で姉や妹がいる話はなかったような
兄弟は私と同じ弟だと……………

なんだ、ちゃんと綺麗な人がいるじゃん………


「あなた、佳樹の会社の人?」

「あ……………はい」

ズイッと俯いた万由の顔を覗き込んで

「あなた…………佳樹のなに?」


「…………え?!」

玄関を開け放しながら、腰に手をあて目を細めて見つめられた




「一花……誰?」

後藤の風邪を引いたような掠れ声が、部屋の中から聞こえた


「あっ、あのっ違います。書類を頼まれただけですからっ失礼します!」

A4サイズの書類ケースとコンビニ袋を渡して直ぐに一礼し、その場を離れた


「え、ちょっとっま…………あ」



「万由っ!!」


扉を開けたままの女性の後ろから、後藤が飛び出してきた


急いでエレベーターに向かった万由の後を、部屋着のまま追い掛ける後藤に直ぐ腕を掴まれた



「まっ………ゴホッ、ってちがっ……ゴホッゴホッゴホッ」

急に走り飛び出したせいなのか、思いっきり咳込んだ後藤


「えっ、あ、わっ後藤さん! 大丈夫ですか?!」


とても大丈夫と言えないその様子に、さっきまでの逃げ腰だった事を忘れ、苦しそうな後藤の背中を擦った




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