夏の嵐と笑わない向日葵
カラカラ…
「ふぅ……」
お風呂から上がり、濡れた髪を一つに纏める。
ポタポタと髪から落ちる水滴が鎖骨に落ちた。
「ニャー…」
ブルブルと体を震わせ、水滴を飛ばすノラにタオルを渡すと、毎度ながらそれに自分で体を擦り付ける。
あたしは、寝巻きの白色のワンピースを着た。
その上に水滴が落ちると、肌が透けてしまう事に気づく。
「これは……まずいかな」
でも、ここはあたしの家だし、嵐君に気を遣うのは変だと思う。ここは、いつも通りでいこう。
「ノラ、行こう?」
あたしはお風呂の扉をカラカラと開ける。
家は古い日本家屋だからか、そちこち横にスライドするような扉ばかりだ。
「お、よう……」
「………ここに何か用?」
ここはお風呂だってさっき説明したはず。
なのに、お風呂の前にいるなんて…。
「変態」
「ち、ちげーよ!!トイレと間違えたんだ!!」
焦ったように無実だと両手を上げる嵐君にため息をついて、その横をすり抜ける。
「おい!!」
「トイレ……廊下つきあたり、左にある」
それだけ言い残して、あたしはノラと居間へと向かう。
そして、ドライヤーを手に、縁側に座った。
これがあたしとノラの入浴後の日課だ。
濡れた髪で受ける夜風は涼しくて気持ちがいい。
「ノラ、今日も月が綺麗…」
あたしは、濡れた髪のまま縁側に横になる。
うちの縁側はおばあちゃんがよく野菜を育てていたけれど、今は何も無い殺風景な庭になってしまった。