抜き差しならない社長の事情 【完】
  ***


そして、パーティは無事終わり――


「紫月、タクシー一緒に乗って行くか」

「あ、はいお願いします」


ロビーで相原と紫月がそんな話をしていると、そこに……


「紫月さん、送りますよ、同じ方向だし」

振り返ると、神田がいた。


「え?」

「お、良かったなぁ紫月、送ってもらえ」

「え…… でも申し訳ないです」

「大丈夫大丈夫。一滴も酒は飲まなかったし、安心してください」

「――じゃぁ、すいません」


ニコニコと笑って見送る相原に追い立てられるようにして
紫月は神田の後について行った。


「なんだか、すいません」

「いえいえ、とんでもない。美人を送れるんだからうれしいですよ」

「あはは、今日は沢山褒めてくださるんですね。ありがとうございます」


神田は社交的で穏やかな人だった。

自分から社員たちの中に入ってよく話を聞き、
紫月のことも『どうですか?』と気にかけてくれる。
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