抜き差しならない社長の事情 【完】
「お疲れさまです」
「お疲れさまです」
通り一遍の挨拶を交わし、
「どうぞ」と促されて助手席に乗ると、切野社長と秘書の曄は後部座席に座った。
こうなっては仕方がない。
見ざる聞かざるを決め込んでいたが、車の中は静かで、後ろの会話は否が応でも耳に入ってくる。
「今日はありがとうな、人気絶頂の俳優が来てくれたお蔭で、俺も鼻が高かったよ」
パーティには人気若手俳優が来ていた。
紫月には遠い存在すぎて、俳優に近寄ることもしてないかったが……。
「彼ね、売れない時期が長かったんですよぉ。
その頃からのお友達で、売れない劇団のチケット買ってあげたり差し入れも時々してあげたから、恩を感じてるらしくって、快く引き受けてくれました」
「そっか、辛い時を支えてあげたんだな曄は」