抜き差しならない社長の事情 【完】
チラリとバックミラーを見ると、
優しく曄を見つめて微笑んでいる、切野社長の横顔が見えた。
見なければ良かったと後悔した紫月は、
もう決してバックミラーは見ないと心に決めて横を向き、外を見つめた。
時間はまだ9時。
人影も多く電飾は煌めいて街は賑やかだ。
「可哀想だったんですよ、将来が見えないからって彼女にも捨てられちゃって。
そういえばね、それがこの前のドラマをきっかけに急に売れ出したでしょ。
そうしたらね元カノが5年ぶりに連絡とってきたんですって。会いたいって。売れた途端手のひら返しやがって!って怒ってましたよぉ」
内容が内容だけに、紫月は居たたまれなくなっていたが、
クスッと笑った切野社長は
「女の知恵は後へ回るって言うからな」と言った。
「それって、ことわざですかぁ?」 という曄の質問に
「ああ、女がみんなそうって訳じゃないけど、そういう風に
後になって後悔するバカな女がいるってことだよ」
「ふーん
女だって本当に好きったら働いて、彼を支えるためにがんばるでしょぉ?
結局好きじゃないってことですよねぇ」
「だろうなぁ
本当に好きならな」