ナイショの恋人は副社長!?
約束をしていたのだから、そんなに驚くことはないはずだ。
しかし優子は、心のどこかで、待ち合わせ場所に来て案内するのは、誰か別の人物だろうと思っていた。
さすがに、内線はくれても、わざわざ迎えに来てくれることはないだろう、と。
それが、まさか副社長である敦志が、直々に足を出向かせてきたことに驚倒したのだ。
「では、参りましょう。……どうかしましたか? あ……やはり、本日、なにかご予定があったとか?」
敦志が目の前にいるということの驚きが大きい優子は、固まった表情でいた。
そのため、敦志は心配そうに眉を寄せる。
「あっ。いえ、予定はないです! ただ……」
「ただ?」
「なんでこんなことになっているのか、さっぱり頭がついていかなくて」
正直、敦志に近づけることはうれしい。けれども、やはり不安がそれを上回る。
(彼の役に立てるなら――。そう思えば思う程、責任が重くのしかかる気がして)
優子は困った顔で笑うと、頭だけでなく、心もついていかなくて目を泳がせる。
不安そうな優子を目の当たりにした敦志は、反省して視線を落とした。
「そうですね。大変、失礼致しました。私の説明不足です」
「えっ。いや、そんなふうには……」
「移動中にお話させていただいても、よろしいですか?」
そう言う敦志は、いつものような穏やかな笑顔ではない。
バツが悪そうな沈んだ表情に、ほんの少し口角を上げるような微妙な面持ちで優子を見た。
当然、優子はそんな敦志を見るのは初めてのこと。
内心、戸惑いながら、コクリと小さく頷いた。