ナイショの恋人は副社長!?
ヴォルフが食事に選んだ店は、これもまた優子にとっては意外な寿司屋だった。
なぜ意外なのかというと、ほとんどのドイツ人には生ものが不評だったからだ。
優子は自身が留学する前に、日本に留学していたドイツ人学生と関わることがあった。
それがきっかけで、留学先にドイツを選んだわけだが、その学生数人は口を揃えて寿司が苦手だと言っていた。
その印象が強かったため、ヴォルフが調べて訪れた店が寿司屋だった時は、まだ寿司を口にしたことがなく、興味本位で選らんだのかと思う。
しかし、寿司は既に食したことがあり、どうやらヴォルフの好物らしい。
優子はヴォルフと寿司屋を後にし、一軒のバーに入る。
注文したカクテルを先にヴォルフが口をつけたのを、優子は横目で見た。
そして、先程、美味しそうに寿司を食べていた姿を思い出す。
「お刺身、平気なんですね。驚きました」
「ああ。でも、タコとイカはだめかな」
おどけて笑うヴォルフに、優子は出会った時よりも打ち解けていた。
それでも、相手は友人でも先輩でもなく、大切なお客様だ。
笑っていた優子は、切り出しづらそうに困った目をヴォルフに向ける。
「あの……先程の食事代は……」
「いらないよ。当たり前だろう?」
黄金色の髪を靡かせ、青い目を細めて断られる。
優子はそういう返しがくるだろうとは予想していたが、だからといって、簡単に『ごちそうさまです』とは言えない。