ナイショの恋人は副社長!?
目を背けていたドリスは、思わず敦志を見る。敦志は、その体勢のまま続けた。
「あなたを傷つけたいわけじゃない。けれど、嘘を吐くほうが失礼だと思いましたので、ハッキリと言わせていただきます」
ドリスとは違い、迷いのない声でそう言い切ると、敦志は顔を上げる。
光を灯した黒い瞳を向け、真剣な面持ちでドリスに伝えた。
「他に守りたい人がいるんです」
ごまかすこともせずに真正面から言われると、ドリスもすぐには言葉が出ない。
目を逸らさずに自分を見続ける敦志から視線を少し落とし、小さく笑った。
「……私が帰国するまで、嘘をついて、適当に気を持たせていたらいいのに。契約に支障が出るとは思わなくて?」
ドリスの言い方は、決して脅すようなものではない。
すでに、敦志の心を繋ぎ止める術はないのだと諦めて、苦笑いを浮かべていた。
「そういうことは、出来ない性分のようで。だから、出会った時のあなたに言ったことも、嘘ではありません」
「え……?」
「『ドレスがよくお似合いだ』と」
敦志が微笑みかけながら言うと、ドリスは視線を上げて目を潤ませる。
その素直な感情を表情に表すドリスをみて、敦志は口角を上げた。
「それと、あなたは、プライベートをビジネスに持ち込むような人ではないと思っていますから」
メガネの奥の目を柔らかく細めて笑う敦志に、ドリスはぽつりと聞き返す。
「そんなこと……どうしてわかるっていうの?」
顔を横に向けるドリスに、敦志は破顔一笑して答えた。