唯一の愛をキミに【完】
フォルテへと行ったら律が心配そうな顔をしていた。


まだ戻ってないか。


唯、どこに行ったんだよ…。


「俺、もう一度探してくる」


「わかった!戻ってきたら哲のところに連絡って、哲、唯ちゃんが!」


話途中で律が扉に目を配らせる。


カランカランという鈴の音が聞こえたと同時に唯がその姿を見せた。


「上原くん…。どうして、ここに?」


「由香里から連絡がきた。唯の携帯にも電話したけど出なかったから心配したんだぞ?」


唯は泣きそうなになるのをグッと堪えている。


「ごめん…なさい」


「唯が謝ることない。俺のために怒ってくれたんだってな。ありがとう」


包みこむように優しく抱きしめると唯は微かに震えていた。


「悪い、律。唯、疲れてるみたいだから今日はこのまま帰るよ」


「うん、わかった。由香里にはわたしから連絡しておく」


「俺からもあとで由香里に電話する。唯、行こう」


唯をそっと抱き抱えると唯は律にも心配をかけさせた、という想いからかペコッと頭を下げた。


自分がこんな状況でも真っ先に他人のことを優先する唯。


なぁ、少しは俺に甘えてくれよ。
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