花盗人も罪になる
「私はいっくんが好きだから結婚したし、いっくんに触れられるのも幸せだけど……結婚してもそうでない人もいるんだね」

紫恵の意味深な言葉に、逸樹は首をかしげた。

「結婚してもそうでないってどういうこと?」

「うん……同窓会の前に特に仲良しだった4人でランチに行ったんだけど、その時にね……」

紫恵は綾乃夫妻の事情や春菜の不倫、同棲している彼氏と結婚したくてもできない圭の話をした。

結婚や恋愛に対する価値観や常識は人それぞれだと思ったと紫恵が言うと、逸樹はそうだねと言ってうなずいた。

「何が幸せかなんて、わからないもんだな」

自分の知らない世界を垣間見たのか、逸樹は感慨深げに呟いた。

「いっくんは浮気とか不倫したいと思ったことある?」

思いもよらぬ紫恵の問い掛けに、逸樹は驚いて何度も瞬きをした。

「あるわけないじゃん。俺はしーちゃんじゃなきゃイヤだって、さっきも言っただろ?」

「もし私が綾乃みたいにしたくないって言ったら?」

逸樹は考える。

愛する紫恵に拒まれたらどうするのか?

紫恵が好きだから、もちろん紫恵としたい。

でも紫恵に無理強いはしたくない。

人並みの性欲はもちろんあるが、紫恵以外の女とはしたくない。

結局、紫恵以外の女とは考えられない。


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