花盗人も罪になる
「はぁ……落ち着く……」

「……? いっくん、どうしたの?」

酔っているわけでもなさそうなのに、なんだかいつもと様子が違う逸樹に、紫恵は首をかしげた。

「とりあえず……お腹すいた。しーちゃんの作った御飯が食べたい」

「うん、すぐ用意するね」

「あ、でもその前に……」

「ん?」

「ただいま、俺のしーちゃん」

逸樹は紫恵を抱きしめて、幸せな気持ちでただいまのキスをした。


食事をしながら、逸樹は紫恵に先ほど起こったことを話した。

残業後にストーカーが怖いから家まで送って欲しいと円に頼み込まれ、仕方なく家まで送り届けたこと。

部屋の中に誰も潜んでいないか確認させられ、帰ろうとするとせめてお茶くらい飲んで行ってと引き留められたこと。

帰ると言ってそれを断ると、抱きつかれて好きだと言われたこと。

ストーカーに狙われているかもしれないという円からの相談が、逸樹の気を引くための嘘だったこと。

円のとった行動の一部始終を聞いた紫恵は絶句した。

「奥さんがいてもいいなんて言ってさ。俺は良くないっての。しーちゃんが心配してたのはこれだったんだなーって納得した」

「ふーん……」

ついさっきそんなことがあったばかりだというのに、あまりにもあっさりしている逸樹の顔を見て、紫恵はなんとも言えない複雑な表情を浮かべた。



< 134 / 181 >

この作品をシェア

pagetop