花盗人も罪になる
逸樹には大輔の言いたいことがなんとなくわかった。

大輔が事故にあった時、結婚していれば一番先に香織の元に連絡があっただろう。

でも今はまだ、二人は恋人同士ではあっても、家族ではない。

つらい時ほど愛する人にそばにいて欲しいと大輔は思ったのだと逸樹は思う。

「転勤が決まった時、結婚の話は出なかったんですか?」

「考えましたけどね。その頃は付き合い出して半年ほどしか経ってなくて……まだ早すぎるかもとか、身内も知り合いもいない場所に突然連れて行くのはかわいそうかなって思うと、何も言えませんでした」

「なるほど……」

「それに急な転勤だったんで、ゆっくり話し合う時間もなくて。何も話せないでいる間に1年経ってしまいました」

逸樹は大輔の話を聞きながら、出張で紫恵と離れていたたったの5日間がいつもの何倍も長く感じたことを思い出した。

「1年か……。すごいですよね。妻と離れて暮らすなんて、僕には無理です。大阪に出張した時なんか寂しくて、たったの5日間が長くて長くて……」

「俺はたまにしか会えないからいつも不安ですよ。他の男に口説かれてないかなとか……忘れられてたらどうしようとか」

大輔は少し恥ずかしそうに苦笑いを浮かべた。


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