花盗人も罪になる
大輔と香織はお互いを大切に想っているからこそ、今の形を変えることを躊躇しているのだと逸樹は思う。

だけど離れているのは寂しくて、相手の心から自分の存在が少しずつ薄れて行くのではと、いつも不安なのだろう。

「本当に大事なことは言葉にしないと。ただ思ってるだけじゃ伝わりませんよ」

「……村岡さんはどうでした? プロポーズのタイミングとか……迷いませんでしたか?」

「僕は付き合ってすぐから結婚したいと思ってたので、半年ちょっとでプロポーズしました。うかうかしてると誰かに横取りされそうで」

「結婚は早かったんですか?」

「僕が26で妻が23の時です。付き合って1年ちょっとで結婚して、今7年目です」

てっきり新婚だと思っていたのに、思っていたより結婚してから長いんだなと大輔は意外そうな顔をした。

付き合って半年ほどで結婚話をすることをためらい、遠距離恋愛になることを選んだ自分とはずいぶん違うなと大輔は思う。

「ずいぶん思いきったんですね」

「妻のことが好きで好きで、誰にも渡したくなかったんです。今もそれは変わりません」

大輔の職場には子煩悩なマイホームパパの人もいるにはいるが、ここまで妻が好きだと言い切る人は一人もいない。

既婚者のほとんどが未婚の者に対して『結婚は現実だ、甘い夢は見るな』と言う。

甘い結婚生活を夢見ていた人ほど延々と妻の愚痴を言ったり、妻に隠れてこっそり若い女の子のいる店に通ったり、なかには不倫している人もいる。

そんな人たちを見ていると、結婚に対して少し気後れしている部分は間違いなくあった。

だけど逸樹と話していると、幸せな結婚は間違いなくあるんだなと思えた。


< 148 / 181 >

この作品をシェア

pagetop