花盗人も罪になる
その後彼は真理子さんと出会って結婚し、二人の男の子にも恵まれ幸せな家庭生活を送っていた。

しかし半年前に偶然取引先で出会った女社長が昔泣く泣く別れた彼女だった。

彼女は親の決めた相手と結婚したものの、彼をあきらめきれないままで結婚生活がうまくいくはずもなく、何年も経たないうちに離婚して、その後は独身を貫いてきたのだそうだ。

もう二十何年も前に終わったはずの恋なのに、再会した途端またその恋は燃え上がった。

消えたと思ったはずの胸の中の残り火は、消えることなく静かに燃え続けていたのだ。

「遊びじゃなくて本気なんだってさ。この先の人生を彼女と生きたいって。息子たちの学費とか生活費とか、お金のことはなんとかするからだって」

息子たちのためにこのまま何事もなかったように結婚生活を維持するのか、夫の言う通り離婚するのか、真理子さんが悩んでいた時、息子たちが言ったそうだ。

自分たちのために悩まなくていい、お母さんのこの先の人生はお母さんのために生きて欲しいと。

夫のことを愛していないわけではないけれど、もう必要とはされていないのに子供を盾にすがるようなことはしたくない、と真理子さんは言った。

夫には夫なりの生き方があるし、残りの人生を本当に好きな人と一緒に生きたいという気持ちがわからないでもない。

だったらもう夫を解放してあげようと真理子さんは思ったそうだ。


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