花盗人も罪になる
綾乃の夫は浮気どころか、休みの日まで家族のために仕事をしていたらしい。

「ふーん……それホント? 浮気してるふりしてたってこと?」

「私の気を引きたかったらしい。嫉妬とかして欲しかったんだって」

「何それ、いい歳した大人の男が……。可愛いとこあるじゃん」

春菜はおかしそうに笑った。

「そんなわけで、うちはうまくいってるよ。それより春菜はどうなの? まだ不倫続行中?」

「あー、あの人とは別れた」

春菜はサラダを取り皿に乗せながら、他人事のように言った。

「そうなの?」

「奥さんが離婚してくれって言い出したら、あの人慌てちゃってさ。そんなの見てたら私も冷めた」

奥さんは離婚を切り出したりはしないはずだと言っていた春菜の予想は、見事に覆されたようだ。

「ずいぶんあっさりね」

「だってさ。奥さんより私の方が結婚したいくらい好きだって言ってたじゃない?」

「そうだったね」

「それって奥さんは絶対に自分から離れていかないって思ってたから言えたのよ。結局は奥さんの手のひらで転がされてたってわけ」

春菜はつまらなさそうにそう言って、口に放り込んだプチトマトを噛みしめた。

「完全に奥さんの勝ちね」

「勝ち負けじゃなくてさ。私より他の女が大事な男なんか願い下げ。だから別れた。私とも別れたくないって言ってたけどね」

「勝手な男だね。なんにせよ、奥さんのいる男なんて別れて良かったよ。もっといい人見つけたら?」

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