花盗人も罪になる
「私の話はそんなもん。圭は? 相変わらず彼とは変わりないの?」

春菜が尋ねると、圭はパスタを口に運ぶ手を止めて、少し黙り込んだ。

「……彼とは半月前に別れた」

「え?」

「私のことはもうずっと前から、ただの同居人とか仕事仲間くらいにしか思えなくなってたんだって」

彼とはうまくいっていると言っていたはずなのに、この数か月の間に何があったのか?

紫恵は圭が何も話してくれなかったことが少し寂しかった。

「それでも……何年も同棲してたよね?」

綾乃が少しためらいがちに尋ねると、圭は小さくため息をついて寂しそうに笑った。

「実を言うとね。同棲っていうよりはただの同居。もう5年くらいずっと、恋人らしいことはなかったから」

「それって……セックスレスってこと?」

「セックスどころか、キスとかハグとか、スキンシップみたいなものは一切なかったよ。私とはしなかったけど、他の人としてたのはずっと前から気付いてた」

5年もの間、すぐそばにいるのに好きな人と触れ合うこともなく、その人が自分以外の人を抱いていたことに気付いていたなんて、あまりに悲しすぎる。

「嘘でしょ……?」

「ホント。だからなんとなく私のことはもう好きじゃないんだなってわかってたんだけどね。私は好きだったし……別れようって言われるのが怖くて、自分からは何も言い出せなかった」

「それつらすぎる……。圭、よく耐えたね……」

綾乃は圭の肩をポンポンと優しく叩いた。


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