花盗人も罪になる
春菜はその人を自分の前に突き出した。

「紹介するわ。この人ね、今私が付き合ってる人」

「春菜の彼氏……?」

突然何事かと綾乃は困惑気味だ。

「鈴木玲音。綾乃は初めて会うでしょ」

「えっ……ちょっと待って、何それ? どういうこと?!」

春菜の彼氏と、ついさっき聞いたばかりの圭の別れた彼氏が同じ名前であることに、綾乃は混乱している。

「会ったこと一度もなかったし、まさか圭の彼氏だとは思わなかったけどね。玲音も私と圭が友達なんて知らなかったんだろうけど?」

玲音は突然のことに身動きもできず絶句している。

「玲音さぁ……2か月前、私と付き合い出した時に、もう彼女とは別れたって言ったよね?」

春菜は冷たい笑みを浮かべながら、玲音のシャツの胸元を掴んだ。

「実際は圭と別れたの半月前なんだってね? それに彼女に浮気癖があるとか? 彼女の束縛がひどくて別れたくても別れられなかったとかも言ってたよね?」

「それは……」

圭のいないところで、玲音は春菜に、長年付き合ってきた彼女を捨てる自分を正当化するための嘘をついていた。

それを圭の前で春菜に暴露された玲音は、冷や汗を浮かべて顔をひきつらせている。


< 175 / 181 >

この作品をシェア

pagetop