花盗人も罪になる
とりあえず話はついたようだ。

逸樹は腕時計をチラッと見てコーヒーを飲み干した。

「じゃあ、これ以上遅くなってもなんなので、そろそろ帰りましょう」

「はい。聞いていただいてありがとうございました」

伝票を持って立ち上がり、レジで会計を済ませた逸樹は、スーツのポケットに無造作にレシートを押し込んだ。


カフェを出て駅までの短い道のりを一緒に歩いた。

「ちなみに今日は誰かに来てもらえるんですか?」

「はい、今日は駅まで友達が車で迎えに来てくれるそうです」

「北見さんは一人暮らしですか?」

「はい。実家からだと通勤に時間がかかりすぎるので、就職を機に実家を出たんです」

若い女性の一人暮らしは何かと物騒だ。

帰り道で後をつけられて、家に入るタイミングで押し入られたりはしないかと、逸樹は少し心配になる。

「鍵を開ける前に一度周りをよく見て、ドアを開ける前にもう一度、周りに誰もいないか確認してから家に入るんですよ」

「はい、気を付けます」

改札口を通り抜けた所で挨拶をして、別々のホームに向かった。


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