黄金の覇王と奪われし花嫁
はたして、本当に馬鹿なのはロキと自分とどちらだろうか。


兄が死んだあの日、自分は長い付き合いだったイリアを殺し、ネイゼルを生かす事に決めた。 誰に強要された訳でもなく、自分で決めたのだ。

イリアとして生き続けどこぞの知らない男達にたらい回しにされるくらいなら、ネイゼルとしてロキと共に在りたいと。

報われなくても、叶わなくても、ただこの男の側で生きたかったのだ。


一瞬、イリアに戻ってしまった顔をすぐにネイゼルのそれに戻す。


「馬鹿なことを。 イリアは死んだぞ」

本心を隠すように顔を背けたネイゼルに、ロキはふっと優しく微笑んだ。
四六時中側にいるネイゼルでも滅多に見れないロキの柔らかい笑顔に、またイリアが顔を出しそうになる。


「私の中では生きていますよ」

ロキのその言葉はじんわりと染み込んでいき、毎夜淹れてくれるお茶と同じようにネイゼルの心を緩めてしまう。

ネイゼルは観念したように天井を仰ぎ、ぽつりぽつりと話し出した。

「・・・まぁ、いつか。 可愛い甥っ子が一人前になって、全て任せられるようになったら。もしかしたら、そういう日が来るかも知れないな」

亡き兄ネイゼルの忘れ形見はもうすぐ10歳になる。やんちゃ盛りで、事あるごとに自分やロキに怒られてばかりだ。

まだまだ一人前には程遠いか・・・

ロキもまた、ネイゼルと同じことを思ったのだろう。互いに顔を見合わせて、クスリと笑った。


「・・・たとえ嘘でも、その言葉だけで私は生きていけます」

「馬鹿な男だ」

「わかっています」

ネイゼルは信じていないと公言していた風の女神に、生まれて初めて祈った。


今だけ、どうか今だけは、イリアに戻ることを許して欲しいとーー。


イリアは瞳を閉じて、遠い、けれど途方もなく幸せな未来に想いを馳せた。



END


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