女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~


 そのまま弁当を食べ始める彼に、私は少し違和感を覚える。

 ・・・なんだろ。うん?何か、違うな。

 私は雑誌を閉じて壁を見詰めた。

 何か、今、違和感が・・・・。

「さっき俯いてたの、頭痛か?」

 彼の声が聞こえて思考は中断される。

 私はそう、と頷いた。そして違和感は棚上げにした。今考えても判らないんだから、後で考えたって一緒だろう。

「風邪引き?」

「うーん・・・。昨日縁側で寝そべっていたのが原因かしら・・・」

 彼は私の言葉に少し笑う。

「また縁側にいたのか。好きだな、あそこ」

「そう、好きなの。庭も見れるし、あそこでごろごろしてたら猫になった気分」

 嬉しく答えたら、隣の彼がぼそっと突っ込んだ。

「・・・猫はビール飲まねえだろ」

 あら、バレてたか。昼間っから飲んでるの。私はぺろりと舌を出してあははと笑う。

「あの極楽は止められないの」

 彼は苦笑を返して箸を動かしていた。

 途中で何人かの百貨店側の社員が声をかけていくのに片手をあげて言葉を返す彼を残して立ち上がる。

「もう時間?」

「そう。桑谷さん、ごゆっくり」

 途端に彼が嫌そうな顔をした。

「・・・自分だって桑谷だろう」

「呼び名はそう簡単には変わらないんです」

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