女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~


 2週間後、ちゃんと決定してからお義母さんや自分の母や店長に伝えよう。

 ・・・桑谷さんには・・・どうしようか。

 彼の反応が予測出来ない。それに、まだ確定したわけでもないし・・・。ううーん・・・。ここで可愛らしく、「あなたお父さんになるのよ!」何てメールするのも私のキャラじゃないしな・・・。

 そのイメージを頭の中で展開して思わず笑ってしまった私だった。

 その後の2週間を待つのは、もうちょっと長く感じると思っていた。だけど実際には妊娠したことばかりに頭が占められることはなかったのだ。

 あのバカ女からの攻撃は、止まなかったから。



「―――――畜生」

 唇から呟きとなって怒りの感情が零れる。

 私は自分のロッカーを開けたままで、湧き上がる怒りを懸命に抑えていた。

 今度は死骸を放り込むって嫌がらせではなかった。もっと直接的だった。私はロッカーのドアを閉め、着替えもせずにそのままロッカールームを出る。

 売り場へいく為に北階段を降りながら、誰であれ出会った人に噛み付きたい衝動を抑えていた。

 制服は、着れる状態ではなかったのだ。

 白いシャツの上に着るベストとスカートには、べったりと赤い液体がつけられていた。

 匂いから水彩絵の具ではないかと思った。何かの入れ物にいれて液体をぶっかけたらしく、ロッカーの中に赤色が飛び散り、制服から滴り落ちた赤色が靴の上にも点々と落ちていた。


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