女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~


 そこまでやるか、って状態だ。何なんだ、ここは!?私は治安の悪い中学校に通う生徒なのか!?

 何だって、こんなこと・・・。

 非常に不機嫌なまま販売員の使命である笑顔もかなぐり捨てて店員入口から売り場へ向かう。

 途中で仲良くなっている鮮魚の人たちに挨拶をされたけど、それどころでない私は無視をして売り場へ向かった。

 後ろで皆が呆気に取られているのを感じていた。私は夫が働いているということもあったし、百貨店側の社員さんやアルバイトさん達にはいつでも丁寧に接するようにしてきた。それが、爆発寸前の顔で、ヒール音をたてて私服で出てきたものだから、皆何事かと目で追っている。

「――――――・・・小川さん?」

 ふと振り返った店長が、やってくる私に気付き、目を丸くした。

「おはようございます」

 低い私の挨拶に言葉を返せず、驚いた表情のまま見ている。

「店長、私はどうやらイジメにあっているようです」

「え?」

 カウンターに手をついて身を乗り出す私服の私を周りの店の販売員も手を止めて見ているのが判った。

「ネズミ、ゴキブリ、次は、制服を汚されました」

 福田店長は眉を顰めて、ちょっと待って、と声を小さくした。

「ネズミは偶然じゃなかったってこと?ゴキブリも入れられてたの?それに――――・・・制服が、何ですって?」

 カウンターの前に出てきてくれたので、声を潜めて3件のことを話した。

 どんどん顔を曇らせる店長が、最後は口に片手をあてて絶句した。

「・・・赤い絵の具で?」


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